冨田勲「月の光」(ASIN:B00005EGC3)

YMOより先にトミタでシンセサイザーサウンドを知った私にとって、特別の位置にある一枚。初めて聴いたときのように「こんな音初めて聴いた!」と思うことはもうなくて、ああ、モーグだなあなんて即物的な感想をもらすようになった今でも、この作品に対する愛着と評価は変わりません。ミケランジェリ、ベロフ、ギーゼキング等の名演奏と比べても遜色ない、堂々と彼らに伍することのできるアルバムだと思います。
最近自伝も出た(未読ですが)冨田勲。作曲家としても数々の功績があるのですが、基本的に彼の最大の関心事は「この音をどう響かすか」に集約されると思います。音楽で何かを表現しようとするよりも、音響への関心の方が上を行く。「惑星」でのロケット発射音の録音やサウンド・クラフト。サラウンドのいち早い導入など枚挙にいとまがありません。そんな彼の世界を象徴しているのがこのアルバムなのです。全ての音に冨田のこだわりが込められたまさしく入魂の一作。