佐藤允彦「Plectrum」(ASIN:B00005HZFV)

というわけで、今日はチェンバロのアルバムを取り上げます。タイトルのPlectrumとは、鳥の羽の軸あるいは革で作る、チェンバロの弦をはじく爪のこと。佐藤允彦初のチェンバロ・ソロ・アルバムです。長年弾いてきたピアノからちょっと離れて向かい合ってみたチェンバロは、新鮮な感興を佐藤にもたらし、「もっぱら油絵を描いてきた画家が、紙と墨と筆を手に入れた」という言葉でその違いを例えています。さらに引用。「ピアノはチェンバロの後裔、と言われてもわずかに鍵盤の外見だけが似ているだけで、まったく別の楽器である。むしろ、これほどへだたった楽器に「鍵盤」というインターフェイスがあるおかげで、門外漢でもその魅力を味わうことができる幸運を感謝しなくてはならない」そのこれまでとは全く違う楽器を手に、佐藤は自作曲やスタンダード、ボッサなどをスムーズに奏でていきます。典雅に歌われる曲もあれば、エリントン・ナンバー「キャラバン」のように分厚く音を重ねていくのもあり、改めてチェンバロの多彩さに気づかされる仕組み。繰り返し鑑賞するに充分たえるものになってますよ。

チェンバロについて語っている佐藤允彦のインタビューはこちら