京極夏彦「陰摩羅鬼の瑕」

Now it's dark and I'm alone
But I won't be afraid
In my room, in my room
―「IN MY ROOM」The Beach Boys


犯人探しやラストでのどんでん返しを期待して読んだ人は、この作品に対してかなりの不満を持つかもしれません。なにしろ、私にすら途中でおおよその見当がついてしまったんですから。けれども、くどいぐらいに入念に描写された舞台設定と登場人物の魅力によって最後まで飽きずに読み通すことができました。元刑事の伊庭がいい味出しています。推理小説の衣をまとった観念小説。エリアス・カネッティ「眩暈(めまい)」を読み返したくなりました。